煌   「……可哀相に。ここ……切ってしまいましたね」
拓人 「…っ?」

`島さんの言葉に、俺は自分の手首を見た。
割れたカップの破片が飛んだのか、まるで切り裂かれたような一筋の切り口から、赤い血が流れ始めていた。
その時、不意に`島さんの指が俺の手を掴んだ。
少し骨張った、長い指。

拓人 「あ……っ」

`島さんの舌が俺の指に触れた途端、背筋がぞくりとした。
そのままゆっくりと濡れた舌が指先から手首まで伝って、流れた血を舐め取っていく。

拓人 「……っあ、……っ……っぁ……っ」

指も、舌も、驚くほど冷たかった。
けれどその冷たい舌は、まるで生き物のように俺の指の上で動いて滲む血を吸い取っていく。

煌   「深く……切りましたね」
拓人 「`島さん……」

それ程深く切ったようには見えないのに、まだ血はゆっくりと流れ続けていた。
`島さんは俺の傷口から血が滲む度に唇を押し当てて、真新しい血を舐める。

拓人 「……っぁ……っぁ……っ」

耳朶や首筋が、奇妙に火照り始めていた。
頭の芯がとろけ始めたかのように、俺は`島さんを止めることが出来なかった。

煌   「拓人………」
拓人 「あ……っ、はいしま……さん……っ、……っは、っぁ……っ、ぁ……」

`島さんの舌が触れた場所から熱い痺れが全身に伝って、躯が震え始める。
自分が出している声が、自分のものじゃないような気がした。
でも、どうしても`島さんを振り払うことが出来なかった。

煌   「……困ったね。血が……どんどん溢れてくるよ……?」
 
`島さんはそう言って、俺のシャツの袖をそっと捲り上げた。
そして俺の爪を指ごと甘く噛んでから、血の筋を辿るように指を舐め上げ、皮膚の上に唇を這わせてくる。

拓人 「は…ぅ……っぁ、っぁ……っあ……っ」

下肢が、淫らな熱を持ち始めていた。
俺が最も嫌うその感覚が、全身を熱くし始めていた。
いつもなら誰かに触れられることを本能的に躯が拒むのに、今はただ、快感しかなかった。

拓人 「や…め……っ」

俺は叫ぼうとした。
自分に何が起こっているのか分からなかった。

煌   「拓人? ……この私を……拒むのかい?」
拓人 「え……?」



※掲載の文章は、ゲーム内のテキストをネタバレ箇所を一部カットして掲載しています。


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