俺はセーターの袖をまくり直して、冷蔵庫の中から『パスカリ』が入った花瓶ごと取り出した。
100本以上はある。
それを全く躊躇らいもなく買って帰ると云うのは一体どんな心境なのだろう。

煌  「……このお店は、いつもこんな遅くまで開いてるんですか?」

ゆっくりと店内を見回した後、彼が静かな声で尋ねてくる。
俺は彼の視線を感じながら、花瓶から上げた薔薇を丁寧にテーブルの上に置いた。

拓人 「そうです、深夜2時までやってます。
    この辺りはお店とか多いんで、夜遅くてもお客さんが多いんです」
煌   「そうなんですか。……最近、近くに引っ越して来たばかりなので知りませんでした」
拓人 「じゃぁ、まだ色々不便でしょう?……あ、棘はどうしますか? 取っておきますか?」
煌  「いいえ、そのままで結構ですよ」
拓人 「はい、ではこのままで包みますね」
煌   「荷物はそんなになかったのですが……でも、新しい土地はやっぱり戸惑いますね」

一体どんな仕事をしてるのだろう、とついつい考えてしまうのはこんな仕事の性のようなものだろう。
少なくとも、普通のサラリーマンには見えない。
深夜に、100本以上の薔薇をこともなげに家に買って帰る男。
奇妙と言えば奇妙だ。
それでも変に浮ついて見えないのは、寂しげに見える色素の薄い瞳のせいだろうか。
日本人ではない。
でも喋りは流暢だし、ヨーロッパ系の血が強い顔でもない。

拓人 「……白い薔薇がお好きなんですか?」
煌  「そうですね、やっぱり一番綺麗に見えるんじゃないかな。
    ……赤は、血みたいで少し苦手ですね」
拓人 「ああ……濃い赤は……確かに」

煌  「でしょう?」

拓人 (でも……さっきのあれは一体何だったんだろう……)

 この男を見た途端に、背中が痛んだような気がした。
 心の底が、引き剥がされるような気がした。



※掲載の文章は、ゲーム内のテキストをネタバレ箇所を一部カットして掲載しています。


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