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遼太 「さ、拓人! 今度はケーキとチキンもいってみようぜ!」
拓人 「俺が切るよ」
包丁を持ってケーキを凝視めた遼太から、俺はそのままその凶器をやんわりと取り返す。 ケーキを巧く切り分けるのはなかなか難しい。 俺は遼太が選んできたこの芸術品みたいに綺麗なケーキを、自分の手で形良く切り分けてみたかったのだ。
遼太 「俺、そのプレートとサンタの飾り欲しい!」
拓人 「飾りは全部食べていいよ」
遼太 「マジ!? やった!」
はしゃいだ眼差しで俺の手元とケーキを眺めている遼太に、つい怪訝な声が洩れる。
拓人 「……お前、そんなに甘党だっけ?」 遼太 「いや? どっちかっつーと塩辛いもんの方が好き。
でもこう云う飾りはさ、ガキの頃から兄貴や姉貴達と取り合いだったからさ」
拓人 「ああ……兄弟か」
遼太 「そうそう。だから何となく見ると、全部欲しくなっちゃうんだよな」
遼太は、今のご時世には珍しい5人兄弟だ。 二人の兄と、二人の姉。 高校時代の学園祭で勢揃いをしているのを見たことがあるが、色々な意味でなかなか壮観だった。
拓人 「そう言えば、一番上のお兄さんて、今は弁護士事務所に務めてるんだっけ?」 遼太 「そうだよ、流石にまだ独立は無理だからな。
2番目の兄貴と一緒にいると、難しい話ばっかでやんなるよ」
拓人 「凄いよな、一番上は弁護士で、2番目は警視庁か」 遼太 「お陰で親戚が集まると、俺ばっかり風当たり強いでやんの。
早くまともになれとか言って。音楽だってまともな仕事じゃんな?」
そう、俺と遼太は同じバンドのメンバーなのだ。 メンバーは他にあと3人。 遼太がギターで俺がキーボード、そしてヴォーカル、ドラム、ベースと立派に揃っていて、ライブハウスでも定期的に演っている。 中規模なハコなら、一応は満員に出来るらしい。 けれど俺は、人気や世間の反応と云うものに、どうしても興味を持てなかった。 ピアノを、キーボードを、あの白と黒の鍵盤を叩くのは好きだった。 けれど、それだけだった。 正直なところ、他のメンバーのように強くプロを願ってもいなかったし、女の子達の華やかな嬌声も余り得意じゃなかった。 だったらどうして弾いているのか、と。 自分の中にそんな考えが浮かぶ度に、俺はそこから眼を背ける。 見えているものを、見たくなかった。 俺の心の底にわだかまっているものに、気付きたくなかった。
拓人 「……お前はみんなに大事にされてるんだよ、末っ子。ほら、ケーキ切れたぞ」
遼太 「お! サンキュー!」
拓人 「チキンは別に切らなくてもいいよな?」
遼太 「全然オッケー、このままかじるし」
そう答えたその口で、遼太はこんがりと焼けたチキンに思い切りかぶりつく。 俺はグラスに残っていたシャンパンを一気に干して、また注ぎ足す。
※掲載の文章は、ゲーム内のテキストをネタバレ箇所を一部カットして掲載しています。
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